エストニアのドローン規制はどのような感じなの?
他のヨーロッパの国々と、ほぼ同じ規制が適用されているよ
- エストニアではEU規則に従い、ドローンはC0~C4のクラスラベルで分類され、それぞれに応じた飛行条件が定められています。
- 日本と比べると規制は一見厳しそうに見えますが、250g未満の小型機なら比較的自由に飛ばせる点で旅行者には扱いやすいです。
- ただし、CEマークや登録番号の表示が必須となるため、日本よりも形式的な要件はしっかり整えておく必要があります。
※本記事は、2025年10月時点の情報を参考に作成しています。
エストニアのドローン規制

ヨーロッパの国々はドローンに関して共通のルールを持っています。
その中でもエストニアは、EU(欧州連合)の規則をそのまま取り入れているため、ドローン操縦者にとって理解しやすい国のひとつです。
ドローン規制を管轄している機関
エストニアでドローンの規制を担当しているのはエストニア運輸庁(Estonian Transport Administration / Transpordiamet)です。
同庁は航空分野だけでなく、道路・海運など交通全般を監督する国家機関ですが、ドローンに関しては特に次のような役割を持っています。
| 名称 | エストニア運輸庁(Estonian Transport Administration / Transpordiamet) |
| 住所 | Lõõtsa 10, 11415 Tallinn, Estonia |
| 連絡先 | (+372) 620 1200 / info@transpordiamet.ee |
| 公式サイト | https://www.transpordiamet.ee/en |
| 役割 | ・ドローンオペレーター登録の受付 ・リモートパイロット証明の試験実施 ・飛行禁止区域(NOTAM)の告知 ・事故や違反の報告窓口 ・安全ガイドラインの公開 |
観光客を含めて、ドローンを飛ばすすべての人が運輸庁が定めたルールに従う必要があります。
公式サイトは英語版も用意されているため、日本人でも情報を確認しやすい仕様です。
適用法令
エストニアのドローン規制は、基本的にEU全体の共通ルールであるEU規則(2019/947)に基づいています。
EU規則では、ドローンの利用を「リスクの低い順」に オープンカテゴリー・スペシフィックカテゴリー・サーティファイドカテゴリー に分類しています。
- オープンカテゴリー:レクリエーションや観光客が使う場合に該当。低リスクで許可が取りやすい。
- スペシフィックカテゴリー:産業利用やイベント撮影など、より高度なリスクがある場合に必要。
- サーティファイドカテゴリー:航空機に近い扱い。大型ドローンや高度な商用利用向け。
今回は、観光客や旅行者に関係の深い「オープンカテゴリー」を中心に解説します
CEマークとクラス識別ラベル

エストニアを含むEU加盟国では、販売・使用されるドローンにCEマークとクラス識別ラベル(C0~C6)の貼付が求められます。
CEマークはEU基準を満たす安全認証であり、消費者が安心して使用できることを示します。
一方、クラス識別ラベルは重量や安全機能によって分類される表示で、飛ばせる場所や必要な資格が変わります。
上記のマークとラベルは飛行ルールを判断する大切な基準です
エストニアのオペレーター登録とドローン登録について

エストニアでは、一定以上の性能を持つドローンを飛ばす場合、オペレーター登録とドローン登録が必要です。
オペレーター登録の概要
| 費用 | 無料(オンライン申請のみ) |
| 有効期限 | 1年間(更新が必要) |
| 対象年齢 | 16歳以上(C0クラスや自作250g未満は例外あり) |
| 対象条件 | 250g以上のドローン、またはカメラ付きドローン |
| 登録方法 | LOISシステムからオンライン申請、登録番号を取得し機体に表示 |
日本人旅行者でもエストニア滞在中に登録可能です
オペレーター登録の流れ

オペレーター登録は、毎年1回、期限前に更新します
ドローン登録の概要
玩具ではない250g以上のドローンや個人データを取得可能なカメラ付きのドローンは、登録作業を行わなければなりません。
| 費用 | 無料 |
| 有効期限 | 1年間(オペレーター登録と同じ更新サイクル) |
| 対象年齢 | 制限なし(ただし操縦は16歳以上が原則) |
| 対象条件 | 250g以上またはカメラ付きドローン(玩具除く) |
| 登録方法 | LOISシステムで機体情報を入力、登録番号を発行し貼付 |
250g未満でカメラを持たない小型ドローン(例:トイドローン)は登録不要です
ドローン登録の流れ

ドローン登録も更新は1年ごとに行います
ドローン保険加入の義務について

エストニアではレクリエーション目的のドローン飛行において、法律で保険加入が義務づけられているわけではありません。
ただし、もし墜落や事故で第三者に損害を与えた場合、操縦者が全額を負担する必要があります。
そのため観光客であっても、賠償責任をカバーできる保険に加入しておくことが強く推奨されます。
特に都市部や観光地で飛行を予定する場合は必須に近い準備といえるでしょう
海外でも利用できる日本のドローン保険
近年では、日本の保険会社が提供する海外旅行保険に「ドローン賠償責任特約」を付けられるプランがあり、海外でのドローン事故による損害賠償もカバーされる場合があります。
| 企業名 | 最大補償金額 | 特徴 |
|---|---|---|
| 東京海上日動 | 最大10億円(プランによる) | 海外旅行保険に付帯可能。ドローン事故による対人・対物賠償をカバー。 |
| 損害保険ジャパン(SOMPO) | 最大1億円〜10億円(契約内容による) | レクリエーション利用にも対応。賠償リスクを幅広く補償。 |
| 三井住友海上 | 最大1億円〜10億円(契約内容による) | 海外旅行保険とセット加入。旅行中の偶発的な事故を幅広くカバー。 |
渡航前に保険会社へ確認し、補償範囲に「無人航空機(ドローン)」が含まれるかチェックしましょう
エストニアのオープンカテゴリー(レクリエーション飛行)の概要

エストニアで趣味や観光目的でドローンを飛ばす場合、多くのケースは比較的リスクの低い「オープンカテゴリー」に当てはまります。
このルールはEU全体で共通の制度であり、使用するドローンの重量や飛行場所によって条件が異なります。
| サブカテゴリ | 主な対象ドローン | 飛行可能エリア・条件 | 必要な資格 |
|---|---|---|---|
| A1 | C0(250g未満)またはC1ドローン | 人の上空を飛行可能 (ただし人の集まりの上は不可) | A1/A3オンライン試験(C0は不要) |
| A2 | C2ドローン(4kg未満、低速モードあり) | 人から30m以上離れて飛行 (低速モードでは5mまで可) | A2試験(対面試験が必要) |
| A3 | C3・C4ドローン(25kg未満) | 人から150m以上離れた場所、 住宅地や工業地帯からも距離を取る | A1/A3オンライン試験 |
オープンカテゴリーのライセンスや試験の概要
エストニアでドローンをレクリエーション目的で飛ばす場合、250g以上のドローンを使用するならリモートパイロット証明が必要になります。
証明には A1/A3 と A2 の2種類があり、ドローンの重量や飛行場所に応じて取得する試験が異なります。
| 種類 | 費用 | 有効期限 | 対象年齢 | 試験内容 |
|---|---|---|---|---|
| A1/A3 証明 | 10ユーロ | 5年間 | 16歳以上(C0は例外あり) | オンライン試験 (40問、75%以上で合格) |
| A2 証明 | 16歳以上 | 対面試験(30問、75%以上で合格、Tallinn/Tartuで実施) |
A1/A3試験はオンラインで受験でき、旅行者でもエストニア滞在中に取得可能です。
C0クラス(250g未満)のドローンでは試験は不要ですが、C1以上では必須となります。
一方、A2試験は現地の運輸庁オフィス(タリンまたはタルトゥ)で受験する必要があり、事前登録が必要です。
A2を取得すると、人に比較的近い距離での飛行が可能になります。
エストニアで取得したライセンスは、他のヨーロッパ旅行先でも同じ証明を使えるメリットがあります
エストニアのレクリエーション飛行における飛行ルール

エストニアでレクリエーション目的のドローン飛行を行う際には、EU共通のオープンカテゴリー規則に基づいた基本ルールを守る必要があります。
| 最大高度 | 地上から120mまで |
| 飛行方式 | 目視飛行(VLOS:Visual Line of Sight)、補助者による監視も可 |
| 飛行可能エリア | 人や建物から安全距離を確保する(A1・A2・A3の条件に従う) |
| 禁止行為 | 危険物の輸送、物の投下、混雑した場所の上空飛行 |
| 年齢制限 | 原則16歳以上(C0ドローンや自作250g未満は例外あり) |
| 夜間飛行 | 禁止ではないが、十分なライト装備と安全対策が必要 |
| プライバシー | 他人の敷地や人物を無断で撮影しないこと |
特に都市部や観光地では人との距離を守ることが重要で、違反すると罰則の対象になる可能性があります
エストニアの飛行禁止エリア(地理的ゾーン)
エストニアでは、ドローンを自由に飛ばせる場所と飛行が制限されている「地理的ゾーン」が定められています。
飛行前には必ずエストニア運輸庁や航空管制の地図アプリで最新情報を確認する必要があります。
| 空港周辺 | タリン国際空港、タルトゥ空港、地方空港の周辺は制限区域。飛行には特別許可が必要。 |
| 軍事施設 | Ämari空軍基地などの周辺は全面的に飛行禁止。 |
| 都市部の特定区域 | 首都タリンの中心部や港湾施設周辺は制限が多い。 |
| 自然保護区 | 国立公園や環境保護区域では野生動物保護のため飛行が制限される場合がある。 |
| ヘリポート周辺 | タリン市内にある病院や施設のヘリポート周辺は特別な通報と許可が必要。 |
| 一時的な制限区域(NOTAM) | 大規模イベント(音楽フェス、スポーツ大会)や政府行事の際に臨時で設定される。 |
ドローン飛行前には、必ず最新の制限情報を確認しましょう。
飛行制限マップ/アプリ

エストニアでは、運輸庁と航空管制が提供するドローン飛行マップが公開されており、空港周辺や軍事施設、自然保護区などの制限エリア、さらにイベント時に設定される一時的な飛行禁止区域(NOTAM)を確認できます。
すべての操縦者は、飛行前に必ずこのマップを確認し、計画段階と飛行直前の両方で最新情報をチェックすることが義務づけられています。
| 名称 | 概要・特徴 | 対応端末 |
|---|---|---|
| Estonian Drone Map | エストニアのUAS制限区域・一時制限区域・NOTAMを表示。 飛行計画支援機能もあり。 | iOS(App Store版) Android(Google Play版) Web(ブラウザ) |
| EANS AIM マップ / Web 環境 | ウェブ上で制限空域を確認できるマップ環境。 常設・一時制限区域を表示。 | Web(パソコン・スマホブラウザ) |
上記のリンク・アプリを使えば、飛行可能かどうか地図で視覚的に確認できます
エストニアのドローン規制に違反した際の罰則

エストニアでは、ドローンの規制に違反した場合の罰則は違反の内容や程度によって異なり、軽い場合は警告や罰金、重い場合はドローン没収や刑事責任に発展する可能性もあります。
| 違反内容 | 想定される罰則 | 補足 |
|---|---|---|
| 登録義務違反 (オペレーター登録やドローン登録をせずに飛行) | 200〜500ユーロ程度の罰金 | 登録番号の表示がない場合も含まれる |
| 無資格飛行 (必要なリモートパイロット証明を持たずに飛行) | 罰金+ドローン没収の可能性 | 特にA2飛行での無資格操縦は厳格に処分される |
| 禁止空域での飛行 (空港・軍事施設・イベント会場など) | 最大1,000ユーロ以上の罰金、悪質な場合は刑事責任 | NOTAM違反は重い扱い |
| 危険飛行 (人混みの上空や住宅密集地での飛行) | 罰金+飛行禁止処分 | 事故が発生した場合は賠償責任も追及される |
| プライバシー侵害 (他人を無断で撮影・公開) | 行政罰または民事訴訟 | GDPR(EUの個人情報保護法)違反に発展するケースあり |
事故やプライバシー侵害を起こした場合には行政罰だけでなく民事責任として高額な賠償を求められることもあり、重大な違反をすれば次回以降の入国審査に悪影響を及ぼす恐れもあります。
観光客であっても規制違反に例外はなく、「知らなかった」では済まされません
エストニアの首都タリン市には独自のルールがある
エストニアの首都タリンは観光都市として人気がありますが、空港や港が近く、また旧市街が世界遺産に登録されていることから、ドローンの飛行には独自の制限が設けられています。
| 旧市街(Old Town) | 世界遺産のため無許可飛行は禁止に近く、観光地上空の飛行は原則不可。 |
| 港湾エリア(Tallinn Harbour) | 港湾管理者からの特別許可が必要。安全上の理由で無断飛行は禁止。 |
| 病院ヘリポート周辺 | 近接時はタリン塔(Tallinn Tower)の航空管制に事前通報し、離陸許可を取得。 |
| タリン空港周辺 | 市中心部に近いため高度0mゾーンが設定され、特別承認なしでは飛行不可。 |
| イベント開催地 | 音楽フェスやスポーツ大会時には臨時の飛行禁止区域(NOTAM)が発行される。 |
タリンで安全に飛ばすためには、必ず航空管制アプリや最新のNOTAMを確認し、許可が必要な場所では事前に手続きを行いましょう。
日本人がエストニアでドローンを飛ばすための条件と注意点

ドローンを飛ばすまでの流れ
- ドローンを持ち込む前に、日本国内で利用している保険が海外でも適用されるか確認
- エストニアに到着後、LOISシステムでオペレーター登録・ドローン登録を実施
- 必要に応じてA1/A3またはA2ライセンスを取得
- 飛行前に航空管制アプリでジオゾーンや一時的制限区域を確認
- 安全ルールとプライバシー保護を遵守
事前の保険確認と現地での登録を忘れると飛行できない可能性があるため注意が必要です
必要な書類
- オペレーター登録証明:オンライン登録で取得、番号を機体に表示
- ドローン登録証明:対象となる場合のみ必要
- リモートパイロット証明:A1/A3またはA2
- 旅行保険証書:ドローン賠償責任が含まれることを推奨
- パスポート:登録や試験時の本人確認に必要になることがある
現地での確認に備え、英語またはエストニア語の表記があるものが望ましいです
ドローン持ち込み時の注意(関税・バッテリー)
- 関税:個人利用目的であれば通常は免税だが、商用利用を疑われる場合は課税対象になることもある
- バッテリー(リチウム電池):航空会社ごとに規制があり、機内持ち込みが基本。容量(Wh)によって持ち込める個数が制限されるので要確認
- 機内持ち込みの工夫:耐火バッグに入れるなど安全対策をしておくと安心
空港チェックイン時にスムーズに通過するためにも、航空会社の規定を事前に確認して準備しましょう
その他注意点
- プライバシー保護:観光客や現地住民を無断で撮影・公開しないこと
- 自然保護区域:国立公園や保護区では野生動物への影響を考慮し、飛行が制限される場合がある
- イベント会場:音楽フェスやスポーツイベント時には一時的に飛行禁止区域(NOTAM)が設定される
- 言語の壁:試験や学習教材はエストニア語が中心。事前に英語資料を確認しておくと安心
- 違反リスク:前述のとおり罰則は厳格に適用されるため、観光客でも例外はない
人や建物が多いエリアでは衝突やプライバシー侵害に注意し、安全第一で楽しむことが大切です
まとめ
エストニアでのドローン飛行は、EU共通の規則に基づいているため、はじめてドローン飛行をする人にとって理解しやすい仕組みになっています。
オペレーター登録やライセンス取得といった基本を守り、飛行禁止エリアや保険の準備をしっかり行えば、安全にレクリエーション飛行を楽しめるでしょう。
事前準備とルールの確認が、安心して空撮を行う重要なポイントです。
▼参考資料
- Estonian Transport Administration – Flying Drones in Estonia
- Estonian Transport Administration – Operator registration
- Estonian Transport Administration – Geographical zones
- Estonian Transport Administration – Remote pilot certificates
- Estonian Transport Administration – FPV flights / U-space
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